- 個人事業税とは、個人事業を営む事業主が住民税と共に地方自治体に収める税金。
- 事業主控除は290万円。利益が290万円以下の個人事業主は個人事業税を納める必要がない。
- 個人事業税は業種によって税率が異なり、非課税の業種が存在する。
- 個人事業税は8月と11月に納税する。
個人事業主として売上の規模が大きくなってくると発生する税金が個人事業税です。本記事では個人事業税とは、個人事業税はいつ払うか、納付方法、計算方法、控除の詳細、業種別の税率、個人事業税がかからない(非課税の)業種、仕訳と勘定科目についてまとめています。
個人事業税とは
個人事業税とは、個人事業を営む人が住民税と共に地方自治体に収める税金です。国に納める所得税とは課税所得金額の計算方法や控除が異なり、売上-経費が290万円以下の個人事業主は個人事業税を納める必要がありません。業種によって税率が異なり、一部の業種では非課税になりますが、大部分は5%の税率になります。
個人事業税はいつ払う?
確定申告をしている人であれば個人事業税のために別途手続きは不要です。8月に各都道府県税事務所から納税通知書が送付されてくるので、第1期分を8月、第2期分を11月の2回に分けて納税します。
個人事業税の納付方法
個人事業税は各都道府県税事務所や銀行、信用金庫、信用組合、農業協同組合、労働金庫、中央金庫、郵便局で支払うことができます。半期の納税額が30万円以下のバーコード付きの納付書の場合はコンビニでも納税することができます。
地方自治体によってはペイジーによる電子納税やクレジットカード納付に対応しています。
個人事業税の計算方法と控除
個人事業税額 = (売上 - 経費 - 事業主控除 - その他控除) × 税率
個人事業税の計算は上記のように売上から経費を引いた所得から事業主控除(一律290万円固定)とその他控除(損失の繰越控除・被災事業用資産の損失の繰越控除・譲渡損失の控除と繰越控除」)を引いて業種別の税率を掛け算します。
つまり、売上-経費が290万円以下の個人事業主は個人事業税が発生しません。
なお、事業主控除は開業や廃業でその年の営業期間が1年未満の場合は以下のように月割りとなります。
事業を行った月数 | 事業主控除額 |
---|---|
1ヶ月 | 242,000 |
2ヶ月 | 484,000 |
3ヶ月 | 725,000 |
4ヶ月 | 967,000 |
5ヶ月 | 1,209,000 |
6ヶ月 | 1,450,000 |
7ヶ月 | 1,692,000 |
8ヶ月 | 1,934,000 |
9ヶ月 | 2,175,000 |
10ヶ月 | 2,417,000 |
11ヶ月 | 2,659,000 |
12ヶ月 | 2,900,000 |
その他控除①:損失の繰越控除
青色申告をしている人でその年の事業が赤字(損失)となった場合は翌年以降3年間繰越控除をすることができます。白色申告の人は繰越控除はできません。
個人事業税 = 400万円 - 290万円 - 100万円 = 10万円
その他控除②:被災事業用資産の損失の繰越控除
青色申告・白色申告をしている人で、台風で収穫前の農作物が被害を受けた場合や震災で店舗や事務所が被害を受けた場合その損失額を翌年以降3年間繰越控除することができます。
その他控除③:譲渡損失の控除と繰越控除
青色申告をしている人で、事業に使っていた資産のうち、土地や建物以外の機械・車両などを譲渡したことで損失が発生した場合は翌年以降3年間繰越控除することができます。白色申告の人は損失が発生した年のみ控除することが可能です。
個人事業税の税率は業種によって異なる
業種別の個人事業税の税率は以下の表のようになっています。ちょっと表現が古めかしいのでエンジニアやデザイナー、イラストレーター、ライター、アフィリエイターなどはぱっと見わかりませんが、結論「エンジニア、デザイナー、イラストレーター、アフィリエイターは5%の課税対象、ライターは場合による」となると考えられます。(正確な判定は納税先の税務署か地方自治体に確認してください。)
エンジニアは製造業や請負業やコンサルタント業、デザイナー・イラストレーターはデザイン業、コンサルタント業、アフィリエイターは広告業などに該当すると指導されるケースが多いようです。
ライターに関しては原稿料が事業の中心であれば個人事業税がかからない文筆業になりますが、あくまでも実態で判断されるので文章を書くことが中心でもアフィリエイトのように広告収入が中心だと課税対象となるようです。
区分 | 税率 | 事業の種類 |
---|---|---|
第1種事業 (37業種) | 5% | 物品販売業、運送取扱業、料理店業、遊覧所業、保険業、船舶ていけい場業、飲食店業、商品取引業、金銭貸付業、倉庫業、周旋業、不動産売買業、物品貸付業、駐車場業、代理業、広告業、不動産貸付業、請負業 、仲立業、興信所業、製造業、印刷業、問屋業、案内業、電気供給業、出版業、両替業、冠婚葬祭業、土石採取業、写真業、公衆浴場業(むし風呂等)、電気通信事業、席貸業、演劇興行業、運送業、旅館業、遊技場業 |
第2種事業 (3業種) | 4% | 畜産業、水産業、薪炭製造業 |
第3種事業 (30業種) | 5% | 医業、公証人業、設計監督者業、公衆浴場業(銭湯)、歯科医業、弁理士業、不動産鑑定業、歯科衛生士業、薬剤師業、税理士業、デザイン業、歯科技工士業、獣医業、公認会計士業、諸芸師匠業、測量士業、弁護士業、計理士業、理容業、土地家屋調査士業、司法書士業、社会保険労務士業、美容業、海事代理士業、行政書士業、コンサルタント業、クリーニング業、印刷製版業 |
3% | あんま・マッサージまたは指圧・はり・きゅう・柔道整復・その他の医業に類する事業、装蹄師業 |
個人事業税がかからない(非課税の)業種
個人事業税がかからない(非課税の)業種は、文筆業、執筆業、作家、林業、鉱物の採掘事業、農業、スポーツ選手、音楽家、画家、海外に事業所があり海外で所得を得ている場合などが該当します。
実体は非課税の業種であると判断されることが重要で、非課税の業種であると主張したとしても、実体が課税対象の業種と判断された場合は非課税にはなりません。
また、医業や歯科医業は第3種に該当して個人事業税がかかりますが、社会保険診療収入の部分は個人事業税がかかりません。
個人事業税がかかる・かからないの判断が難しい業種
まず前提として、個人事業税がかかるか、かからないかは最終的に都道府県税事務所が判断します。しかも、自治体によって判断が異なる場合もあるようです。
また、個人事業税の法定業種は時代にマッチしていない部分もあるため、現代のフリーランスの新しい業種に個人事業税がかかるかどうかが分かりにくいという問題点があります。
以下に新しい業種について調査した結果をまとめます。
- webデザイナー:デザイン業に該当する見解が大半。
- システムエンジニア:法定業種に該当しないためかからないという見解と、製造業・請負業・コンサルタント業のいずれかに該当するという見解に分かれる。
- ライター:作家や文筆業などに該当するためかからないという見解と、請負業に該当するという見解に分かれる。
- ブロガー:作家や文筆業などに該当するためかからないという見解と、広告業に該当するという見解に分かれる。
- アフィリエイター:広告業に該当する見解が大半。
ご自身が個人事業税がかからない業種に該当するかどうかは、納税先の都道府県税事務所に確認してください。
個人事業税の仕訳と勘定科目
個人事業税は経費に計上することができます。経費に計上する場合の仕訳と使う勘定科目は以下の通りです。
関連記事:個人事業税は経費計上できる?
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 100,000 | 普通預金 | 100,000 |