自家消費(家事消費)とは【仕訳の具体例・所得税と消費税の違い】

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自家消費(家事消費)とは

自家消費(家事消費)とは、小売店が商品をプライベートで消費したり、事業で使わなくなった売り物ではない備品をプライベート用にしたり、飲食店がバイトにまかない出したり、事業に関するものを事業とは関係ない日常生活(家事)で消費をすることを意味します。

自家消費(家事消費)は「家事消費等」の勘定科目を使用し、所得税や消費税の計算上、売上にカウントします。

自家消費(家事消費)に該当する・しない具体例

該当する具体例

  • 魚屋が売れ残った魚を自宅で調理して食べた
  • 飲食店がバイトにまかないを作った
  • 事業用のパソコンをタダで友人にあげた
  • 事業用のパソコンを定価の10%で友人にあげた

無料で食べたりあげたりしなくても、低額で譲渡すると定価との差額が自家消費(家事消費)になります。

まかないについては、お店の商品単価とのバランスを鑑みて合理的に説明できる1食の値段を設定し、[単価 × 人数 × 日数]を計算して1か月間や1年間の自家消費(家事消費)を計上します。

該当しない具体例

  • コンサルタントが知人に無料でコンサルを行った
  • ヘアスタイリストが知人の髪を無料でカットした
  • 25万円で買った事業用のパソコンを友人に売った

コンサルタントやスタイリストなどサービス(役務)を提供する場合は自家消費(家事消費)には該当しません。

また、パソコンの例で減価償却資産をを売った場合は自家消費(家事消費)ではなく、譲渡所得になります。

事業消費に該当する具体例

  • 薬局が商品の化粧品をサンプルで店頭に並べた
  • 文房具店が商品として仕入れたボールペンを備品として使った

商品をプライベートで消費せず、事業のための別の目的で使った場合は自家消費ではなく事業消費と言います。

自家消費(家事消費)の仕訳例

ここで、魚屋が売れ残った魚を自宅で調理して食べた場合の仕訳例を見てみましょう。

仕入価格が1,000円の、販売価格が3,000円の魚が売れ残ったので自宅で調理して食べた

仕入時点の仕訳

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
仕入高1,000現金1,000

自家消費(家事消費)時点の仕訳

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
事業主貸2,100家事消費等2,100
若しくは
借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
事業主貸2,100売上高2,100

勘定科目は「家事消費等」もしくは「売上高」を使います。

売上は3,000円ではなく70%の2,100円であることがポイントです。所得税計算における自家消費(家事消費)の売上は以下のルールで計算します。

  • 商品の販売価格の70%
  • 仕入価格

  • のどちらかの高い金額が自家消費(家事消費)で計上すべき売上高

    今回は

    商品の販売価格の70% = 3,000円 × 70% = 2,100円
    仕入価格 = 1,000円

    となるため、2,100円が採用されます。

    事業消費の仕訳例

    薬局が1つ1,500円の商品の化粧品をサンプルで店頭に並べた
    借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
    広告宣伝費1,500仕入高1,500

    サンプルで消費した場合など、商品を商売のために使った場合は事業消費となります。

    この場合は、家事消費等は使用せず、仕入高と使い道(サンプルは販売促進なので広告宣伝費、ボールペンなど文具は消耗品費など)に応じて仕訳します。

    自家消費(家事消費)で計上すべき売上金額は所得税と消費税で異なる

    自家消費(家事消費)した場合はその分を売上に計上する必要がありますが、所得税計算と消費税計算で計上すべき売上金額が異なります

    所得税計算における売上高消費税計算における課税売上高
    • 商品の販売価格の70%
    • 仕入価格
    のどちらかの高い金額が自家消費(家事消費)で計上すべき売上高
    • 商品の販売価格の50%
    • 仕入価格
    のどちらかの高い金額が自家消費(家事消費)で計上すべき課税売上高

    ここで、所得税と消費税の違いを具体例で見てみましょう。

    仕入価格:10,000円(税別)
    販売価格:16,000円(税別)
    所得税計算における売上高消費税計算における課税売上高
    販売価格の70% = 16,000 × 70% = 11,200円
    仕入価格 = 10,000円

    売上高 = 11,200円
    販売価格の50% = 16,000 × 50% = 8,000円
    仕入価格 = 10,000円

    課税売上高 = 10,000円

    こちらを仕訳にすると以下のようになります。

    仕入時点の仕訳

    借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
    仕入高10,000現金10,800
    仮払消費税800

    自家消費(家事消費)時点の仕訳

    借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
    事業主貸12,000売上高(課税)10,000
    売上高(対象外)1,200
    仮受消費税800

    免税事業者であれば消費税は気にする必要はありません。免税事業者と課税事業者については個人事業主の消費税課税売上高の記事で解説していますのでそちらを参照してください。

    飲食業や小売業では自家消費(家事消費)は要注意ポイント

    定常的にまかないが発生する飲食業や、食料品販売で売れ残りを家で消費する小売業の一部などは、ほぼ必ず自家消費(家事消費)が発生すると見做され、税務調査でよくある論点の一つになります。

    確定申告では、青色申告決算書もしくは収支内訳書に家事消費等の欄がしっかり用意されています

    特定の業種によってはここが空欄になっているとツッコミどころとなるので要注意です。