一括償却資産【仕訳例・損金算入要件・除却の対応・償却資産税の取り扱い】

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2018年8月10日に12万円のパソコンを現金で購入した場合の一括償却資産の仕訳例
取引日借方勘定科目金額貸方勘定科目金額摘要
2018年8月10日一括償却資産120,000現金120,000パソコン
2018年12月31日減価償却費40,000一括償却資産40,000パソコン/一括償却
2019年12月31日減価償却費40,000一括償却資産40,000パソコン/一括償却
2020年12月31日減価償却費40,000一括償却資産40,000パソコン/一括償却
購入した日の仕訳について、通常パソコンは工具器具備品の勘定科目を使うところを、一括償却資産の勘定科目で仕訳を切ります。

そして、個人事業主の決算日である2017年12月31日に購入価格の3分の1を減価償却します。通常の減価償却は月割り計算しますが、一括償却資産は1年のいつ購入しても3分の1の金額を減価償却します。以降2019年、2020年も同じく3分の1ずつ減価償却します。

一括償却資産の損金算入要件

一括償却資産は、その年に購入したものを耐用年数に関係なく3年間で3分の1ずつ必要経費として損金算入することができる制度です。損金算入要件のポイントは以下2点です。

  1. 取得価格が10万円以上~20万円未満であること
  2. 青色申告者だけでなく白色申告者もOK。事前申請なども不要

①取得価格が10万円以上~20万円未満であること

一つの資産の取得価格が20万円未満であることが条件ですが、「一つ」とは、パソコンなど機械や工具であれば1台毎、電動ドライバーセットなど工具であれば1セット毎など、一般的に単体では使えない物は使える状態を「一つ」とカウントします。

一括償却資産の損金算入要件
また、10万円以上~20万円未満が要件ですが、10万円未満は一括償却資産か、消耗品費などで購入した年に全額経費計上することが選択できます。

つまり、10万円未満の資産については、その年に節税したいなら全額経費計上、利益を出したいなら一括償却資産にして分割経費計上する選択肢があります

また、10万円以上~20万円未満の資産は必ず一括償却資産にする必要はなく、通常の資産として減価償却することも可能です。

[参考]30万円未満は少額減価償却資産として全額経費にする制度あり

青色申告者限定のルールとして、10万円以上~30万円未満の資産について、その年に全額経費にできる少額減価償却資産の特例というルールがあります。

少額減価償却資産の特例

このルールにより、30万円未満の資産は購入した年に全額経費にすることができます。詳細は少額減価償却資産の特例【仕訳例・限度額・延長された期間】にまとめています。

②青色申告者だけでなく白色申告者もOK。事前申請なども不要

一括償却資産:白色申告者、青色申告者が使える制度
少額減価償却資産の特例:青色申告者限定の制度

青色申告をしていると、青色申告特別控除など、青色申告限定のメリットが多数あります。

少額減価償却資産の特例も年間300万円の上限はありますが、節税に役立つ制度です。一括償却資産は数少ない白色申告者でも使える制度なので白色申告の人は覚えておきましょう。

一括償却資産を途中で除却した場合

購入した一括償却資産の使用を中止(除却)した場合は帳簿から除く仕訳を作りますが、通常の資産は除却損などで簿価(資産価値)をゼロの処理をする一方、一括償却資産の場合はそれができません。

[通常の資産]2018年1月15日に24万円で購入したパソコン(耐用年数4年)が2019年6月に壊れた場合
取引日借方勘定科目金額貸方勘定科目金額摘要
2018年1月15日工具器具備品240,000現金240,000パソコン
2018年12月31日減価償却費60,000工具器具備品60,000パソコン/減価償却
2019年6月30日減価償却費30,000工具器具備品30,000パソコン/減価償却
2019年6月30日雑損失150,000工具器具備品150,000パソコン/除却

2018年1月15日:購入した日付で資産計上します
2018年12月31日:決算日に減価償却の仕訳を起こします
2019年6月30日:壊れるまで使った分の6か月分を減価償却します
2019年6月30日:残りの全額を雑損失で除却します。法人の場合は固定資産除却損の勘定科目を使います

[一括償却資産]2018年1月15日に15万円で購入したパソコン(耐用年数4年)が2019年6月に壊れた場合
取引日借方勘定科目金額貸方勘定科目金額摘要
2018年1月15日一括償却資産150,000現金150,000パソコン
2018年12月31日減価償却費50,000一括償却資産50,000パソコン/一括償却
2019年12月31日減価償却費50,000一括償却資産50,000パソコン/一括償却
2020年12月31日減価償却費50,000一括償却資産50,000パソコン/一括償却

一括償却資産は除却しても残存簿価を雑損失に計上できません。除却しない場合と全く同じで3年間で減価償却します。

2018年1月15日:購入した日付で資産計上します
2018年12月31日:決算日に減価償却の仕訳を起こします
2019年12月31日:決算日に減価償却の仕訳を起こします
2020年12月31日:決算日に減価償却の仕訳を起こします

一括償却資産の償却資産税上の取扱い

償却資産とは、個別に課税される土地や建物、車やバイク以外の事業用資産を指します。償却資産税はこれら償却資産を持っている法人や個人事業主に課税される税金です。

一括償却資産は償却資産税の対象外となります。そのため、償却資産税の負担が少なくなるメリットがあります。

制度償却資産税
10万円未満の全額経費にできる少額資産対象外
一括償却資産対象外
少額減価償却資産の特例対象

まとめる上の表のとおり、10万円未満の全額経費で処理する資産、一括償却資産は償却資産税の対象外、少額減価償却資産の特例で一括経費処理する資産のみ償却資産の対象となります