専従者控除について、専従者控除とは、専従者控除の金額や適用できる条件、配偶者控除や扶養控除との比較、パートをしている専従者の所得計算の注意点、確定申告の書き方をまとめています。
専従者控除とは白色申告者限定の所得控除
個人事業主が事業のために雇っている従業員に対する給与の支払いは全額経費にすることができますが、家族従業員(専従者)への給与は経費にすることができません。
厳密に言うと、白色申告には「専従者控除」の制度があるため、家族従業員(専従者)がいる場合は定額を所得控除として所得金額から差し引くことができます。
一方青色申告は専従者給与として親族以外の従業員と同様に、全額経費にすることができます。
これは所得税法第56条で「事業者の配偶者とその親族が事業に従事したとき、対価の支払は必要経費に算入しない」と定められているためですが、同じ労働に対して申告方法によっては働きが認められない不平等な形になっているため、条文廃止の声も上がっています。
専従者控除の条件
白色申告で専従者控除を計上するためには以下の条件を満たす必要があります。
- 白色申告者と生計を一にする配偶者や親族親族であること。
- その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
- その年を通じて6か月超の期間をその白色申告者の営む事業に専ら従事していること。
専従者控除の条件の中で注意点は3番の項目
条件の3番目に「その年を通じて6か月超の期間」という記載がありますが、例えば7月以降に開業した場合は6か月超にならないので専従者控除を使うことができません。
一方、青色申告の専従者給与は「開業初年度であれば2分の1を超える期間」という初年度の特例があるため、7月に開業した場合は3か月超従事すればよいことになります。この点も白色申告が不利なポイントです。
専従者控除の上限金額は86万円・50万円
専従者控除の上限金額は固定です。配偶者と配偶者以外の親族で以下のようになっています。
以下のいずれか低い金額が控除額となる | |
---|---|
事業所得の金額 ÷ (専従者の数 + 1) | 配偶者86万円 配偶者以外の親族50万円 |
専従者控除には86万円・50万円の上限がある一方、青色申告者が使える専従者給与は、専従者に支払った金額を全額控除することができるため、より大きな節税につながるメリットがあります。これは白色申告と比較した時の青色申告のメリットの中の一つです。
専従者控除と配偶者控除や扶養控除の比較
まず、専従者控除を受ける場合は、その親族については配偶者控除・配偶者特別控除や扶養控除を重複して受けることはできません。
配偶者控除・配偶者特別控除、扶養控除の上限は親族の年齢にもよりますが通常38万円です。つまり、「事業所得の金額÷(専従者の数 + 1)」の金額が38万円以下になる場合は配偶者控除や扶養控除が有利になりますが、ある程度の規模であれば専従者控除のほうが節税につながります。
区分 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
---|---|---|---|
専従者控除額 | -860,000 | -860,000 | |
配偶者控除できなくなる金額 | 380,000 | 330,000 | |
差引合計 | -480,000 | -530,000 | |
税率 | 20% | 10% | |
節税額 | -96,000 | -53,000 | -149,000 |
専従者給与のよくある疑問
Q.専従者に給与を多く支払っても控除額は固定?
仮に年間200万円専従者に給与を支払ったとしても所得控除額は配偶者の場合86万円、それ以外の親族は50万円固定です。白色申告の場合は専従者に多く給与を支払っても節税にはなりません。
Q.専従者控除を受けるための手続きは?
手続きは不要です。一方、青色申告の専従者給与は「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。詳細は「青色事業専従者給与とは」にまとめています。
Q.専従者がパートやアルバイトもやっている場合の専従者の所得計算は?
専従者として個人事業に従事しながら、パートやアルバイトを年間の一部の期間行っている場合、専従者の年間所得には専従者控除で申告した金額を所得とみなします。
例えば専従としての給与所得が年間50万円、専従者控除に計上した額が年間86万円でパートの給与所得が年間60万円あった場合、専従者の年間所得は146万円になります。
専従者控除の確定申告書の書き方
確定申告書に専従者控除を記載する場所は以下の3か所です。
確定申告書Bの1枚目
詳細:確定申告書Bの書き方
確定申告書Bの2枚目
詳細:確定申告書Bの書き方
収支内訳書の1枚目
詳細:収支内訳書の書き方