まずは総合課税と分離課税の違いが一目で分かる比較表にまとめました。
総合課税 | 分離課税 | |
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一言で言うと | 所得の金額をまとめたものに税率をかけて税金の額を計算するもの | 他の所得とは分けて個別に税金を計算するもの |
該当する所得 |
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総合課税と分離課税の違い
所得税には総合課税と分離課税の2パターンの課税方法が存在します。
総合課税のイメージ
総合課税はこちらのように、総合課税に分類される所得をすべて足し算して、総合課税用の税率をかけることで税金を算出します。
総合課税の税率は累進課税制度といって、所得の金額が上がるほど階段式に税率が高くなり、所得が4,000万円を超える人は税率がなんと45%にもなります。仮に仮想通貨(ビットコイン)で1億円利益が出ると控除も含めて40%の4,000万円前後は所得税で引かれて、10%前後が住民税で引かれるので手取りは約半分の5,000万円前後になります。
総合課税のデメリットは、それぞれの所得が少なくても合計すると高額になった場合、すべて一律で税金が課せられる点です。年収500万円の人=所得がざっくり300万円の人は本来所得税が21万円前後(約7%)になるところ、上のビットコインが雑所得として発生した場合、給料部分も40%の120万円持っていかれます。
分離課税のイメージ
分離課税はこちらのように、分離課税に分類される所得に対してそれぞれの所得に定められた税率をかけてそれぞれの税金を算出します。
一部の所得に分離課税が導入されているのはそれぞれ理由があります。例えば株や投資信託の利益にかかってくる譲渡所得などは株式市場を活性化するために、利益が大きくなっても税率は固定化されています。
また、退職所得などは一度に多くの金額が動く所得になるため、総合所得にして高い税率をかけるのは合理的ではないという背景があったります。
【所得別】総合課税と分離課税一覧表
所得区分 | 課税方法 | 具体例 |
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利子所得 | 総合課税 | 海外銀行の預金利子、海外で発行された公社債等の利子、一般公社債などで、同族会社が発行した社債の利子 |
利子所得 | 分離課税 | 特定公社債等の利子 |
配当所得 | 総合課税 | 株の配当、公社債投資信託以外の投資信託の配当、REITの配当 |
不動産所得 | 総合課税 | アパートやマンションの家賃収入 |
事業所得 | 総合課税 | 製造業、卸売業、小売業、サービス業、農業、漁業、などの事業から得る収入 |
給与所得 | 総合課税 | サラリーマンやアルバイト、パートの給料 |
退職所得 | 分離課税 | 退職金 |
山林所得 | 分離課税 | 山林の伐採によって得る収入や山林の売却益 |
譲渡所得 | 分離課税 | 株や投資信託の譲渡所得、土地や建物の譲渡所得 |
譲渡所得 | 総合課税 | 上記以外の譲渡所得 |
一時所得 | 総合課税 | 競馬の払戻金、満期になった保険料の受取、懸賞金 |
雑所得 | 総合課税 | 上記9種類のいずれにも該当しない所得。ビットコイン(仮想通貨)の売却益、ソーシャルレンディング、副業サラリーマンのアフィリエイトやメルカリを利用したせどりの収入、ハンドメイド作品の販売など 詳細:雑所得とは |
損益通算
総合課税と分離課税の区分に限らず、一部の所得で赤字が出た場合は赤字を他の所得の黒字と相殺することができます。これを損益通算と言います。
赤字を計上できる所得は「事業所得」「不動産所得」「山林所得」「一部の譲渡所得」の4つで、それぞれ相殺対象の所得区分が決まっていて、すべての所得から相殺することはできません。
サラリーマン向けマンション投資営業の「節税になります」という営業トークは、不動産所得の赤字を給料の給与所得と合算して本来支払う予定の税金を下げることができるという意味です。
詳細は損益通算とはを参考にしてください。
総合課税と分離課税が選択できる配当所得はどちらが得か?
上場株式の配当所得は分離課税と総合課税の選択が可能です。分離課税で税金を支払うと、所得税と住民税の合計で20.315%の税率となる一方、総合課税を選択すると所得金額によっては税金が安くなります。
配当所得を総合課税にした場合の所得税率
課税所得金額 | 所得税率 | 所得税配当控除 | 所得税実効税率 |
---|---|---|---|
195万円以下 | 5% | 10% | 0% |
195万円超~330万円以下 | 10% | 10% | 0% |
330万円超~695万円以下 | 20% | 10% | 10.210% |
695万円超~900万円以下 | 23% | 10% | 13.273% |
900万円超~1,000万円以下 | 33% | 10% | 23.483% |
1,000万円超~1,800万円以下 | 33% | 5% | 28.588% |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 5% | 35.735% |
4,000万円超 | 45% | 5% | 40.840% |
配当所得を総合課税にした場合の住民税率
課税所得金額 | 住民税率 | 住民税配当控除 | 住民税実効税率 |
---|---|---|---|
195万円以下 | 10% | 2.8% | 7.2% |
195万円超~330万円以下 | 10% | 2.8% | 7.2% |
330万円超~695万円以下 | 10% | 2.8% | 7.2% |
695万円超~900万円以下 | 10% | 2.8% | 7.2% |
900万円超~1,000万円以下 | 10% | 2.8% | 7.2% |
1,000万円超~1,800万円以下 | 10% | 1.4% | 8.6% |
1,800万円超~4,000万円以下 | 10% | 1.4% | 8.6% |
4,000万円超 | 10% | 1.4% | 8.6% |
配当所得を総合課税にした場合と分離課税にした場合の比較
上記の所得税と住民税を足し算したものが総合所得にした場合の配当所得税率です。サラリーマンの人であれば給与所得と配当所得の合計所得が695万円以下の場合は分離課税を選択した場合より税金が有利(得)になることがわかります。
課税所得金額 | 総合課税 | 分離課税 |
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195万円以下 | 7.200% | 20.315% |
195万円超~330万円以下 | 7.200% | |
330万円超~695万円以下 | 17.410% | |
695万円超~900万円以下 | 20.473% | |
900万円超~1,000万円以下 | 30.683% | |
1,000万円超~1,800万円以下 | 37.188% | |
1,800万円超~4,000万円以下 | 44.335% | |
4,000万円超 | 49.440% |