損益通算とは【順序・できるもの・仮想通貨等の雑所得の通算】

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損益通算とは、所得税計算において、ある所得の赤字(損)を別の所得の黒字(益)と一定のルールに従って相殺(通算)することを意味します。

これによって確定申告の際に全体で支払う税金の額が減るため節税効果があります。損益通算ができない所得は赤字が出た場合、その所得をゼロと扱います。

損益通算できる所得損益通算できない所得
  • 事業所得

  • 不動産所得

  • 山林所得

  • 一部の譲渡所得
  • 利子所得

  • 配当所得

  • 給与所得

  • 退職所得

  • 一時所得

  • 雑所得

  • 一部の譲渡所得

損益通算できるパターンと順序

損益通算できる所得は何でもかんでも相殺(通算)していい訳ではなく、相殺できるパターンや順序が定められています。順序については、まずは同じ所得区分の中で内部通算し、異なる所得区分で可能なものは損益通算をする流れです。

①同じ所得区分内での内部通算

まず、同じ所得区分内部で相殺(通算)を行います。例えば、以下のようなケースが具体例として考えられます。

  • そば屋で500万円の黒字、うどん屋で100万円の赤字となっている飲食店オーナーの事業所得が400万円(500万円-100万円)
  • 掛金200万円を払った保険Aを途中解約して50万円に目減りしたが、掛金500万円を払った保険Bが満期で700万円になって帰ってきたサラリーマンの一時所得は50万円(-150万円+200万円)

ここで注意すべきポイントは譲渡所得です。譲渡所得には自宅マンションを売却した場合のような「土地建物等の譲渡所得」とネット証券で株を売買した場合のような「株式等に係る譲渡所得」、ゴルフ件を売却した場合のような「総合譲渡所得」の3種類が存在します。(厳密にはもっと細かく分解されます)

自宅マンション売却の譲渡所得と株の売却による譲渡所得は同じ所得区分でも内部で通算はできないですし、損益通算もできないので要注意です

②異なる所得区分との損益通算

以下に所得ごとの損益通算する順序をまとめました。

損益通算する所得事業所得、不動産所得が赤字の場合総合譲渡所得が赤字の場合自宅売却等の譲渡所得が赤字の場合山林所得が赤字の場合
経常所得1231
総合譲渡所得2-12
一時所得3123
山林所得434-
退職所得5455
※経常所得:不動産所得、事業所得、配当所得、給与所得、雑所得、利子所得のこと

事業所得、不動産所得が赤字の場合の損益通算順序

  1. 不動産所得、事業所得、配当所得、給与所得、雑所得、利子所得と損益通算
  2. まだ赤字が残っている場合は総合譲渡所得と損益通算
  3. まだ赤字が残っている場合は一時所得と損益通算
  4. まだ赤字が残っている場合は山林所得と損益通算
  5. まだ赤字が残っている場合は退職所得と損益通算

総合譲渡所得が赤字の場合の損益通算順序

  1. 一時所得と損益通算
  2. まだ赤字が残っている場合は不動産所得、事業所得、配当所得、給与所得、雑所得、利子所得と損益通算
  3. まだ赤字が残っている場合は山林所得と損益通算
  4. まだ赤字が残っている場合は退職所得と損益通算

総合譲渡所得が赤字の場合の損益通算順序

  1. 一時所得と損益通算
  2. まだ赤字が残っている場合は不動産所得、事業所得、配当所得、給与所得、雑所得、利子所得と損益通算
  3. まだ赤字が残っている場合は山林所得と損益通算
  4. まだ赤字が残っている場合は退職所得と損益通算

自宅売却等で赤字の場合の損益通算順序

  1. 総合譲渡所得と損益通算
  2. まだ赤字が残っている場合は一時所得と損益通算
  3. まだ赤字が残っている場合は不動産所得、事業所得、配当所得、給与所得、雑所得、利子所得と損益通算
  4. まだ赤字が残っている場合は山林所得と損益通算
  5. まだ赤字が残っている場合は退職所得と損益通算

なお、マイホームや自宅マンションの売却以外の不動産の譲渡所得は損益通算できません

山林所得が赤字の場合の損益通算順序

  1. 不動産所得、事業所得、配当所得、給与所得、雑所得、利子所得と損益通算
  2. まだ赤字が残っている場合は総合譲渡所得と損益通算
  3. まだ赤字が残っている場合は一時所得と損益通算
  4. まだ赤字が残っている場合は退職所得と損益通算

上場株式等の譲渡所得赤字の場合の損益通算順序

上場している株や投資信託の売買で赤字が出た場合は株や投資信託同士でしか通算できません。

損益通算に関するよくある疑問

雑所得は他の所得と損益通算できる?

雑所得が赤字の場合は損益通算できません。上記の表のように、例えば事業所得が赤字の場合は雑所得を含む経常所得と損益通算することはできます。

雑所得同士は損益通算できる?

損益通算は所得区分が異なるもの同士の赤字と黒字を相殺する処理を指すので、同じ所得区分内では損益通算と言わず、内部通算と言います。

雑所得同士の例を挙げると、例えば年金を年間400万円受け取っている人が仮想通貨(ビットコイン)で100万円赤字が出た場合は内部通算して雑所得が300万円となります。(各種控除等を考慮しない)

上場株と未上場株は損益通算できる?

できません。それぞれ別の分離課税制度になります。

損益通算しても赤字が残った場合は?

事業所得、不動産所得、総合譲渡所得、山林所得が赤字で損益通算しても赤字が残ってしまった場合、青色申告者であれば損失を翌年以降3年間繰り越して翌年以降に通算できます。白色申告の場合は繰越できません。

サラリーマンの副業は損益通算して節税できる?

サラリーマンの副業でも、事業所得か不動産所得であれば給与所得と損益通算できますが、雑所得では損益通算できません。不動産投資で節税しましょう!というセールストークは損益通算によるものです。