そもそも福利厚生とは、「従業員に対する給料ではない報酬(お金の場合とそうでない場合が存在)」を意味します。事業主の自分だけに対する報酬は福利厚生と言えないということです。
福利厚生費の原則
福利厚生は従業員の手当を手厚くすることで組織貢献や労働意欲向上などを目的としている前提から、福利厚生費として認められるためには以下の2つのポイントが原則となります。
- 平等であること
- 限度額は存在しない
従業員全体に対して平等に適用される必要があり、一部の従業員のみが対象となる費用は給与とみなされる。
福利厚生費には限度額に定めはないが、社会通念上妥当である(第三者が見たときに常識的と考えられる)ことが条件。
福利厚生費の具体例
- 通勤手当(電車・バス・マイカー・自転車など)
- 社宅
- 社員寮
- 家賃補助
- 資格受験料の会社支給
- セミナー参加料の会社支給
- 英会話レッスン料の会社支給
- ご祝儀
- 香典
- 社員旅行
- 研修旅行
- クラブ活動の補助
- 懇親ランチ制度
- 忘年会
- 食事手当
なお、従業員の社会保険の支払いは法律で定められた福利厚生であり、法定福利費で経費計上します。
福利厚生費と接待交際費や会議との違い
飲食代に関しては福利厚生費で処理するか、接待交際費や会議費で処理するか迷う場合があるかと思います。
従業員がいる個人事業主は従業員の慰安のための飲み会等であれば福利厚生費に、取引先などとの事業に関連する目的の会食であれば接待交際費になるでしょう。
会議を開催する目的であれば会議費として経費計上できますが、これもまた社会通念上妥当であることがポイントです。
詳細は会議費のページにまとめています。
個人事業主と専従者の旅行は福利厚生費と認められない
従業員を雇っていて全員と旅行に行く場合は一般的に福利厚生費として認められます。
一方、個人事業主本人とその専従者である妻(夫)と二人で旅行に行く場合は単なる家族旅行とみなされて福利厚生費にならないことが一般的です。
当然ながら個人事業主ひとりで旅行に行く場合は福利厚生費にはできません。
ただし、旅行が全て経費にならない訳ではなく、出張であれば旅費交通費、取材であれば取材費など、事業に必要な出費は経費になります。
福利厚生費でなくとも、本来の目的に応じた勘定科目で経費処理すべし
上記の旅費の例のほかにも、例えば飲食代の場合は会議であれば会議費、接待であれば接待交際費、ご祝儀や香典は接待厚生費など、実体に即した勘定科目で経費計上可能な場合があります。
福利厚生費以外にも何を経費として扱うことができるかどうかは個人事業主の経費一覧にまとめています。
ひとり個人事業主がひとり社長になると福利厚生費は使えるか?
「個人事業主が法人成りしてひとり社長になれば福利厚生費は使えるのでは?」という疑問の答えは「NO」です。
福利厚生の意味合いを考えると個人事業主であろうと法人であろうと、従業員がいない一人事業主の場合は原則認められないようです。