支払調書について、支払帳書とは、提出義務がある人とない人、発行側と受け取り側の注意点、確定申告時の注意点、書き方の具体例、マイナンバーの記載についての注意点をまとめました。
支払調書とは
支払調書とは、法律で定められた取引が発生した場合、支払い側の法人や個人事業主が税務署に提出義務がある法定調書です。支払調書には取引の報酬額から源泉徴収をした金額を記載して提出します。
支払調書には取引に応じていくつか種類がありますが、個人事業主が使う頻度が高いものは「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」になると思います。これは、税理士や弁護士に対する支払いが発生して源泉徴収した場合に提出が必要になる支払調書です。
なお、支払調書を発行・提出する義務があるのは源泉徴収義務者です。源泉徴収義務がない人は支払調書の作成や提出義務もありません。
法人は源泉徴収義務者になりますが、個人事業主はケースバイケースです。自分が義務者に該当するかどうかは「源泉徴収義務者になる個人事業主とは」を参考にしてください。
支払調書の発行側は税務署への提出義務はあるが取引先への提出義務はない
取引の支払いで源泉徴収をした法人や個人事業主が支払調書を発行する場合、提出義務があるのは税務署のみであり、源泉徴収をした取引先には提出義務がありません。
確定申告時期に源泉徴収をした取引先から支払調書を求められても、(ビジネス上の関係性を無視すると)発行を断ることができます。
支払調書の受取側の個人事業主は確定申告で提出不要。手元に保管しておけばOK
確定申告では、確定申告書に源泉徴収された金額を集計して記載し、確定申告の時期に支払う所得税から引き算します。つまり、年間でいくら源泉徴収されたかどうかを把握しておく必要があります。
デザイナーAさんは確定申告する際の所得税額が50万円だった場合、源泉徴収されている(=所得税を天引きで前払いしている)204,200円を引き算して295,800円を確定申告のタイミングで納税します。
源泉徴収される側の個人事業主の立場からすると、先方から支払調書が届かなくて請求したとしても必ず発行されるわけではないため、日々の記帳を徹底して支払調書が揃っていなくても確定申告できる状況を作っておくことが重要です。
また、確定申告書の提出の際は支払調書は一緒に提出する添付書類ではありません。取引先から受け取った払調書は手元に保管しておきましょう。
支払調書の書き方
ここでは報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書について書き方を説明します。画像は外交員報酬を240万円支払った場合の支払調書の書き方の例です。以下に項目別の書き方をまとめました。
項目 | 書き方 |
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支払を受ける者 | 支払調書を作成日の源泉徴収した相手先の住所または所在地、氏名(個人名)または名称(法人名など)を契約書等で確認して記載。お店の名前などの屋号ではなく氏名が必要。 「個人番号又は法人番号」には、相手先のマイナンバー(個人番号)もしくは法人番号を右づめで記載。 |
区分 | 【区分の記載例】 デザイン料、原稿料、印税、さし絵料、翻訳料、通訳料、脚本料、作曲料、講演料、教授料、著作権や工業所有権の使用料、 放送謝金、映画・演劇の出演料、弁護士報酬、税理士報酬、社会保険労務士報酬、外交員報酬、ホステス等の報酬、契約金、広告宣伝のための賞金、競馬の賞金、診療報酬 印税については、「書き下ろし初版印税」と「その他の印税」との区分を記載。 |
細目 | 印税の場合:書籍名 原稿料、さし絵料の場合:払回数 放送謝金、映画・演劇の俳優等の出演料の場合:出演した映画、演劇の題名等 弁護士等の報酬の場合、料金:関与した事件名等 広告宣伝のための賞金の場合:賞金の名称等 教授・指導料の場合:講義名等 |
支払金額 | 当年度中に(未払分も含んで)支払が確定した金額を源泉徴収前の額で記載。消費税がある場合は消費税込みの金額。 控除額以下であるなどのため源泉徴収されなかった報酬、料金等やについても記載が必要。 支払調書の作成日現在で未払分の金額がある場合は、各欄の上段に未払額を内書きする。 |
源泉徴収額 | 当年度中に源泉徴収すべき所得税と復興特別所得税の合計額を記載する。こちらも支払金額同様に、支払調書の作成日時点で未払がある場合はその金額に応じた本来徴収すべき未徴収税額を内書き。 なお、災害による被害を受けたため、報酬、料金等に対する源泉所得税と復興特別所得税の徴収の猶予を受けた税額がある場合には、その税額を含めないで記載する。 |
摘要 | ・ 診療報酬の場合、家族診療分についてはその金額を記載して、合わせて「家族 」と記載。 ・ 災害による徴収の猶予を受けた場合は税額を記載して、合わせて「災」と記載。 ・ 広告宣伝のための賞金が金銭以外のものである場合には、その旨とその種類等の明細を記載。 ・ 支払先が「源泉徴収の免除証明書」を提出している場合や、その他法律上源泉徴収を要しない方である場合には、その旨を記載。 |
支払者 | 報酬、料金等を支払った方の住所または所在地、氏名または名称、電話番号及びマイナンバー(個人番号)もしくは法人番号を記載。 |
支払調書にマイナンバーの記載が必要なのはいつから?
マイナンバー制度の開始により、2016年1月1日以降の取引については税務署に提出する支払調書にマイナンバー(個人番号)の記載が必須になりました。ただし、取引先にも支払調書を発行する場合はマイナンバー(個人番号)を消して発行しないといけないので注意が必要です。
Q3-1 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の写しを、本人に交付する場合には、マイナンバー(個人番号)及び法人番号を当該調書に記載してもよいですか。(平成28年11月29日更新)
A.報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書は、所得税法上、本人に交付する義務がないため、報酬等の支払調書の写しを本人に交付する場合には、番号法上の特定個人情報の提供制限を受けることとなることから、マイナンバー(個人番号)を記載することはできません。なお、法人番号については、マイナンバー(個人番号)とは異なり、番号法上の提供制限はありませんので、任意で記載いただくことは可能です。
出典:法定調書に関するFAQ|国税庁
支払調書を作成する義務がある人は同時に源泉徴収義務者でもあります。個人事業主は基本的に源泉徴収される(支払う)立場ではあるものの、源泉徴収義務者として徴収する立場でもあります。以下の記事の内容も合わせて理解しておいてください。