個人事業主も一定規模になると消費税を納税する義務が発生します。今回は個人事業主の消費税について、免除条件、課税事業者(納税義務者)になるケース・ならないケース・消費税の計算方法(原則課税・簡易課税)、簡易課税者の消費税の仕訳についてまとめました。
個人事業主の開業から2年間は原則消費税が免除
個人事業主が開業すると、開業から最初の2年間は原則消費税の納税が免除される免税事業者になります。
免税事業者とは、売上で消費税を受け取ることがあっても受け取った消費税を納税しなくてよい事業者という意味で、2017年現在だと本来の売上よりも8%分得することになります。
課税事業者とは、売上で受け取った消費税を納税する義務がある事業者です。売上で受け取った消費税から仕入れで支払った消費税を引いた分を納税します。
(※仕入れ等の消費税の支払いはないものとする)
免税事業者の手元に入る現金:216,000円
課税事業者の手元に入る現金:200,000円
個人事業主の消費税が継続的に免除される条件は課税売上高1,000万円以下
厳密に言うと開業から2年間消費税が免除される人は売上規模が一定以下の人限定になります。免税事業者を選択できる事業者は課税売上高が1,000万円以下と定められています。
正確に記載すると「当年度の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の個人事業主は消費税の納税が免除」となります。つまり、2年前の年度の課税売上高が基準となって今年が免税か課税かが決まります。
個人事業主の場合:現在の年から2年前の年度
法人の場合:現在の年から2つ前の事業年度
年度 | 課税売上高 | 消費税 |
---|---|---|
2017年 | 900万円 | 免税事業者 |
2018年 | 1,000万円 | 免税事業者 |
2019年 | 1,100万円 | 免税事業者 |
2020年 | 1,200万円 | 免税事業者 |
2021年 | 1,300万円 | 課税事業者 |
2022年 | 1,400万円 | 課税事業者 |
2020年までは基準期間が1,000万円以下なので消費税は免除されますが、2021年以降は基準期間が1,000万円を超えているので納税の義務が発生します。
課税事業者になるケース・ならないケース
[課税事業者になる]2年前の課税売上高が1,000万円を超えている場合
上記の特定期間(前々年度)の課税売上高が1,000万円を超えている個人事業主は消費税納税の義務があります。
年度 | 期間 | 課税売上高 | 消費税 |
---|---|---|---|
2015年 | 基準期間 | 1,001万円 | |
2016年 | 1,200万円 | ||
2017年 | 当期 | 1,500万円 | 課税事業者 |
[課税事業者になる]前年度の1月1日~6月30日の「課税売上高」と「給与等支払い」がどちらも1,000万円を超えている場合
昨年度の1月1日~6月30日(特定期間と言います)の課税売上高と従業員への給与支払い等がどちらも1,000万円を超えている場合は課税事業者になります。
個人事業主の場合:現在の年の前年度の1月1日~6月30日
法人の場合:現在の事業年度から1つ前の事業年度の前半6か月
年度 | 通期・半期 | 期間 | 課税売上高 | 給与 | 消費税 |
---|---|---|---|---|---|
2015年 | 通期 | 基準期間 | 900万円 | 300万円 | |
2016年 | 前半 | 特定期間 | 2,000万円 | 1,100万円 | |
後半 | 2,500万円 | 1,200万円 | |||
2017年 | 通期 | 当期 | 5,000万円 | 2,500万円 | 課税事業者 |
[課税事業者にならない]前年度の1月1日~6月30日の「課税売上高」と「給与等支払い」が片方だけ1,000万円を超えている場合
上記のイメージのとおり、課税売上高と給与支払いのどちらかが昨年度の前半で1,000万円以下である場合は課税事業者にはなりません。つまり従業員がいない個人事業主は給与支払いが0円なので特定期間のルールによって課税事業者になることはありません。
ただし、2年前の年度の課税売上高が1,000万円を超えている場合は、基準期間のルールで課税事業者となります。
特定期間の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかの判定については、課税売上高に代えて、特定期間中に支払った給与等の金額により判定することもできますので、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、給与等支払額が1,000万円を超えていなければ、給与等支払額により免税事業者と判定することができます。
通常は基準期間(2年前)の課税売上高によって免税か課税かが決まりますが一部例外があります。例外とは、1年前の1月1日~6月30日の課税売上高と従業員等への給与支払いが1,000万円を超えている場合は当年度が課税事業者となります。
年度 | 通期・半期 | 期間 | 課税売上高 | 給与 | 消費税 |
---|---|---|---|---|---|
2015年 | 通期 | 基準期間 | 900万円 | 300万円 | |
2016年 | 前半 | 特定期間 | 2,000万円 | 0円 | |
後半 | 2,500万円 | 1,200万円 | |||
2017年 | 通期 | 当期 | 5,000万円 | 2,500万円 | 免税事業者 |
年度 | 通期・半期 | 期間 | 課税売上高 | 給与 | 消費税 |
---|---|---|---|---|---|
2015年 | 通期 | 基準期間 | 1,001万円 | 300万円 | |
2016年 | 前半 | 特定期間 | 2,000万円 | 0円 | |
後半 | 2,500万円 | 1,200万円 | |||
2017年 | 通期 | 当期 | 5,000万円 | 2,500万円 | 課税事業者 |
個人事業主の消費税の計算方法
消費税の計算方法には原則課税と簡易課税があります。
原則課税の計算方法
売上によって得意先から預かった消費税から、仕入先へ支払った消費税を引いた額を納税する方法を原則課税と言います。原則課税の場合、売上よりも仕入が多く支払った消費税が多い場合は超えた分が還付されます。
原則課税の納税額の計算は、売上に消費税率をかけたものから仕入に消費税率をかけたものを引き算します。
簡易課税の計算方法
課税売上高が5,000万円以下で消費税簡易課税制度選択届出書を事前に提出している場合は簡易課税で消費税を計算することができます。この場合、費用面は計算に一切でてこないので、支払いが多くても還付できなくなってしまうので気を付けましょう。
簡易課税の納税額の計算は、売上に消費税率をかけたものから売上に消費税をに消費税率をかけたものを引き算します。
免税事業者の消費税の仕訳
免税事業者が消費税の仕訳をする場合は消費税込みの「税込経理方式」を採用します。消費税だけを別の勘定科目に切り出して処理することはありません。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入高 | 3,240 | 買掛金 | 3,240 |
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 4,320 | 売上高 | 4,320 |